「ビジネス+IT」の編集長に聞く、デジタル化による世界の変化
ITテクノロジーの進化で、デジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)が様々な場所や業界で進んでいます。そこで本日はソフトバンクニュース編集部が行った「ビジネス+IT」の松尾編集長へのインタビューから抜粋した記事をお届けします。
デジタルの世界がリアルの世界を飲み込んだ
20年以上前からPCを使って仕事をすることは当たり前のように行われ、10年前ぐらいから、企業がインターネットなどのオープンなテクノロジーを活用することが増えて、「つながる」ことの重要性が増してきました。例えば、以前は新聞で手に入れていたようなどこかで起きている事件の情報を、Twitter上で手軽に手に入れられるなど、情報の入手が誰にとっても簡単なものになりました。
消費者についての一番大きな変化はスマホの普及です。ビッグデータ、クラウド、ソーシャルなどと並んだ重要なトピックに挙げられることが多かったですが、実はこの物理的なデバイスの世界的な普及が、私はこの10年でもっとも社会に大きな影響をおよぼしたものだと感じています。そしてこの5年で起こっているのが、このスマホを玄関口とした、「デジタルのリアルへの浸食」です。例えば、アマゾン・エフェクトです。米国では、アマゾンの影響で、リアルの小売店がバタバタと倒産してしまいました。つまり、デジタルとリアルがバラバラにあると思っていたら、いつの間にかデジタルの世界がリアルの世界を飲み込んでしまっている、という状況が起きているわけです。デジタルありきでのリアルを考えるという変化が起きつつあった中で新型コロナウイルスの世界的大流行があり、この動きが加速したというのが有識者の見解で一致するところです。
ITで変化するビジネス
ITは、業務を効率化するための補助手段ではなく、もはやビジネスのど真ん中を変える手段になりました。例えば自動車メーカーにとって、自動車を造るのがビジネスだったのが、今はIT系メガベンダーやクラウド系のスタートアップによって、モビリティサービスを提供する企業に生まれ変わろうとしています。自動車業界のみならずあらゆる業界でこのようなITによる変化は起こっています。少し変わったものでは美容業界などもあります。ちょうど先日、アマゾンがヘアサロンをロンドンで開設したということもありました。
日本の市場規模順でいくつかご紹介すると、まずは自動車業界です。CASEが進行しており、トヨタの豊田章男社長は「100年に1度の大変革の時代」と危機感をあらわにしています。次に建設や不動産業界です。もともと設計などではITがフル活用されていましたが、例えば不動産仲介、管理業務、ローン、価格可視化などでAIや現場のIoT・VR・AR活用などが進んでおり、今後さらに進展していくだろうと思います。そして、医療業界です。ビッグデータやAIなどを活用するAI創薬などは当たり前のことになりました。遠隔医療なども、ITのテクノロジー抜きには語れません。その他、金融・小売・外食・交通・電力など、デジタルによってビジネス形態までもが様変わりしてきている分野は多岐に及びます。
企業や経営者の持つ課題感
企業や経営者は今大きく2つの課題感を持っています。1つは、次のテクノロジーについての情報です。例えばディープテックやAIを筆頭に、ゲノム解析や量子コンピューター、空飛ぶクルマ、VR/AR、代替エネルギーなど、従来の概念を覆すテクノロジーを自社の事業にどう取り込んでいくのか、既存の資産や技術にどう絡めていくかといった点をすごく考えられています。もう一つはSDGsやカーボンニュートラルといった持続可能な社会の実現というテーマです。いずれも目新しいものではないのですが、このようなまったく新しいルールの登場をしっかりと把握すること、さらに、このようなルールを自分たちで作っていくためには何をすればいいのかという課題感を持って取り組んでいる方は多い印象です。
出典:ソフトバンクニュース編集部「さまざまな業界を取材した「ビジネス+IT」の編集長が読み解く、デジタル化による世の中の変化」