ベトナム人材活用し、日本のDX支える
「ローコード」と言われる分野の製品は以前から存在していましたが、最近、急激に注目を集めています。そこで、本日の記事では、日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ 上席研究員の大和田尚孝によるFPTソフトウェアジャパンの小野内隆弘氏へのインタビュー記事の抜粋をお届けします。
ローコードとは?注目を集める理由は?
ローコードはプログラミング言語を習得する必要がなく、短期で身に付けられるため、高度なエンジニアに開発を依頼する必要がなくなり、ある程度の部分をユーザー企業自ら作ることを可能にするものです。ローコードが注目を集め始めた理由としては新型コロナウイルス感染症の流行や、DX元年と言われる中で、開発やオペレーションの在り方が問われ、コスト削減が求められるようになったことがひとつとして挙げられます。また、不確実性が高まる一方、Time to Marketの視点でスピードも求められてきており、アジャイルでDXを進めるための手段としてローコードを検討する企業が増加傾向にあります。その他にも人材の高齢化、「2025年の崖」といわれる現象から高度な人材の取り合いが起き、DXに人材を回せる状況にないというのも理由のひとつです。
ローコードの金額と利用方法は?
小野内氏によると、従来のローコードのサービスは、初期費用やライセンスにより数千万円単位の投資が必要で、敷居が高い部分があったところをFPTのサービスは、数百万円程度に設定したり、トライアルを無料で使用できるメニューを用意したりすることで、敷居を低くしています。
実際の企業のローコードの利用としてはプラットフォームへのマイグレーションや、Notesなどのアプリケーションのモダナイゼーション、モバイルアプリにお試しでローコードを使用するといったケースが増えてきていると言います。
開発手法の変化。アジャイル、ハイブリッド型が増加
従来型の開発は、ある程度ゴールを見極めてウォーターフォールで行っていましたが、DXの場合は、ユーザー自身が何を作っていいか具体的に分からないケースも多くあります。短期間で成果物を作り、実際にビジネスシーンで利用しながら、改善を繰り返す必要があるため、ローコード&アジャイル開発の組み合わせが有効的になっています。
アジャイルな手法を実現しやすいローコードが時代の要請にとてもマッチしている一方で、基幹系のような部分を作るのにローコードが最適とは言えない部分もあり、従来手法との使い分けや、両手法のハイブリッドなど、目的に合わせた使い方が大事なポイントとなっているとのことです。今後も開発の手法はこういった形が増加すると予想されており、FPTソフトウェアではオフショアも活用できるデリバリーモデル、コミュニケーションモデルも作成しています。しかし、効果を最大化できるようなデリバリーモデルも併せて考える必要があり万能ではありません。
FPTソフトウェアではローコードにおいてもFPTのベトナムにおけるリソースが利用できるよう、Product OwnerやProxy Product Ownerの機能に日本人もしくは日本語ができるスタッフをそろえ、ベトナムのリソースをリモートアジャイルという形で利用できるようなデリバリーモデルを有しています。
またソーシング戦略の観点で、DXの場合、プロジェクト終了後も社内にノウハウを蓄積する目的で「インソースでやりたい」と言う方も多いため、例えば最初はベトナムへのアウトソースのような形でスタートし、最終的にはその人材をそのままクライアントの現地法人の社員として雇用可能にする、といった形がとれるようなBOTモデルにも対応しています。
ローコードで3億円削減に成功した事例
ある自動車メーカーではオフショア、85人の体制でローコードを利用し、1ファンクション当たりの生産性が2年間で倍になりました。航空業界でも多くの事例があります。開発コストを抑えることを目的にローコードを利用したところ、10億円の予算に対して3億円の削減に成功し、開発期間も3割短縮できたケースもあります。
コロナが従来のやり方を変えなくてはいけないことを気づかせてくれた部分はあります。今は、従来手法を使おうとすると投資案件を無くしたり見送ったりしなくてはならないような状況にあると言います。一方で、中国よりベトナムの方が安くオフショアができたり、ウォーターフォールでなくアジャイルにすれば簡単に始められるので開発を継続できたりといったことに気づく企業も増えているのではないかとのことです。
今後の目標は?
現在のローコードの開発者はオフショアを入れて1300人程度です。これを今後3年間で4000人規模まで増やしたいと考えています。FPTでは、ファンダメンタルな成長として30%、DXなど戦略的な領域は50~60%の成長を目指してるため、それに見合う規模で成長したいと考えています。
ローコードは、最初の部分では優秀な人材が少数いればいいですが、開発が進んで規模が大きくなると少人数では対応できなくなるという面があり、どんどんスケールしないとコストメリットが発揮できず、ローコードの意味がなくなります。そこで、FPTは十分なリソースを確保してスケールメリットを出し、日本のDXに貢献したいと考えています。
PTはこれまでも、システム開発や基幹系システムのモダナイゼーションなど、日本企業のニーズ拡大に合わせて、短期間で事業規模を拡大してきました。「今このぐらいの引き合いがあるとすると、数年後はこの程度まで需要が伸びるだろう」と予測し、それに合わせてベトナムでの技術者育成の計画を立てます。スピードと規模の両面で日本企業のニーズに応えられるのが我々の強みです。ローコードによる個別システムの高速開発といった局所的な側面でのアプローチにとどまらず、日本企業のソーシング戦略全体を支援していきたいと考えています。
FPTソフトウェアジャパン株式会社 小野内 隆弘氏
出典:日経XTechSpecial「コロナ禍で注目集めるローコード ベトナム人材活用し、日本のDX支える」